すごいZE!平家物語歴史館

日本最大級のろう人形館がどこにあるか聞かれて答えられる人はあまりいないと思いますが、これを読んだあなたは今から即答可能(笑)
公称300体近いろう人形で、平家物語の世界を忠実に再現。さらに1Fには四国出身の有名人のろう人形が立ち並んでおり、郷土の偉人に直接、あった気にさせられます。高松にお越しの際は、是非、『平家物語歴史館』へどうぞ!

というわけで、B級スポットマニアの間では人気の高い『平家物語歴史館』へとやってまいりました。高松駅に戻ってきた頃には完全に雨模様で、タクシーで現地まで向かいましたが、だんだん倉庫街のようなところへと風景が変わって行き、観光客だと思って遠回りされてるんじゃなかろうかと心配になりましたが、そんなこともなく無事到着。でも周りはどう見ても工業地帯です。
開設当初の入口は現在使われておらず、出口として使っていたところが、入口を兼ねております。この辺は事前にネットで聞いていたので驚きはしませんですが、予想以上の寂れっぷりに天が泣いているかのようです。中に入ると事務員と掃除と受付を兼ねてそうなおばちゃんが一人いるだけです。さすがに開館とほぼ同時に来たので無理もないかなと思いつつ、入場料を支払って中へ。
まずは四国の偉人コーナーですが、昨今注目の「坂の上の雲」の秋山真之正岡子規吉田茂大平正芳などの政治家など誰でも知ってる人もいれば、これは何をした人?と首をかしげるような人もいます。まぁ、この辺は前座にすぎませんので、気にせずに奥に進みます。

四国の偉人コーナーの終わりに、斜に構えた徒歩武者が2階の入り口をご案内。この先は平家物語のコーナーですよ、ということでしょうか。階段を上がると中2階のスペースに第十景『一の谷の合戦』の様子が展示されています。展示の都合でいきなり十番目からですが、まぁ、気にしない。人形の大きさを調整することでうまく遠近感を出しながら、どの顔も個性豊かに仕上がっています。ていうか、どうみても顔芸なのが2体ほど交じっています。のっけからわくわくさせてくれる展開ですね。
階段を上りきると平家物語の序幕である第一景『平忠盛、鬼をとらえる』のシーン。雨よけの笠をかぶって灯篭の火をつけて回っている爺さんを遠目で見た人が「お化けー!(((;゚д゚)))ガクガクプルプル 」と言って大騒ぎする中、清盛の父に当たる平忠盛が冷静に正体を暴いたことで、白河法皇から愛人の祇園女御を下賜されるというストーリーです。女の人が聞いたら目くじら立てそうですが、そういう時代だから仕方がない。まぁ、その祇園女御が清盛の母に当たるわけですが、実は女御はこの時すでに白河法皇の息子を宿していたんですよ、というのがこの話のポイント。後世の清盛の出世は“実力”じゃなくて白河法皇の子供という“血筋”のおかげだと主張したい、負け犬貴族の言い訳がこめられています。

この調子で第十七景まで説明すると、平家物語の完全ダイジェストになってしまうので、後日に別枠で解説しますね。なので、以降のタイトルをまず紹介し、印象が強かったのをご案内。尚、以下の説明は平家物語の世界での話であり、忠実な歴史的事実ではないものがありますのでご注意。
第二景『平家に非ずんば人に非ず』・・・権力の頂点に立った清盛に一門が挨拶している場面。
第三景『仏御前、祇王を訪ねる』・・・女好きの清盛が、傍若無人にとっかえひっかえやりたい放題していましたが、さっさと身を引いた女の人は極楽往生しましたよという話。
第四景『清盛の孫、摂政・基房を辱める』・・・清盛の孫、資盛が、摂政・藤原基房の行列にきちんと挨拶しなかったということで起こった騒動。基房側に清盛の部下が仕返しをする場面ですが、牛車の中で驚く基房が顔芸状態。他にも逃げ惑う下人を追い回す武者たちや、それを取り巻くように見ている町の人たちなど大規模な展示になっています。
第五景『俊寛のみ許されず』・・・有名な鬼界が島に島流しになった俊寛のお話。鬼のような形相で赦免の使者を追いかける俊寛と使者に隠れるようにする仲間二人の様子が描かれています。この二組の表情の対比が秀逸。
第六景『物の怪』・・・福原遷都を強行した清盛の周りに様々な怪異が起こりますが、清盛は少しも慌てませんでした。と説明書きにありますが、どう見ても驚いてる顔だろ、これ。
第七景『平家、富士川で大敗』・・・これも有名な水鳥の羽音に驚いて敗走する平家軍の場面。慌てふためく平家軍の様子がうまく表現されています。でも顔芸。
第八景『平重衡、大仏を焼く』・・・奈良の興福寺と戦端を開いた平家軍は興福寺の僧兵を叩きのめしますが、戦場に付き物の付け火が冬の強風にあおられて大仏殿へと飛び火、仏像も溶け崩れるという結果になります。物語では焼いた平家を悪者扱いですが、散々、平家を挑発した挙句にボロ負けした上、本拠地の重要施設を焼き払われた方については批評がありません。日本には「戦争は負けるほうが悪く、負ける戦を始めるのは愚の骨頂」という見方をする文化がないのは今に始まったことではないということです。焼けおちて横に転がった大仏の頭と下敷きになった人が異常にリアルです。
第九景『清盛、高熱を出して死去』・・・物語特有の大げさな表現はともかく、高熱に苦しむ清盛の顔をうまく表現しています。つまり顔芸。
第十景『一の谷の合戦』・・・上記説明参照。
第十一景『平敦盛熊谷直実』・・・一の谷の戦いで敗れた平家軍を追いたてる源氏軍の有名な一場面。でも狭いところに無理やり押し込んだような展示なので、臨場感がなくてろう人形の出来がだいなし。
第十二景『那須与一、扇の的を射る』・・・屋島合戦のハイライト。これも後述の壇ノ浦合戦の横に無理やり押し込んだ感じの展示なので、与一と的の距離が近すぎて雰囲気がだいなし。もう少し的のほうの人形を小さくして遠近感を出すなりして欲しかった。けど、一番突っ込むところは扇の的を持った女性のおでこだろうな・・・。
第十三景『安徳天皇入水』、第十四景『平教経、壮絶な最期』、第十五景『平家滅亡』・・・三つのシーンがひとまとめになった大規模展示。安徳帝が老け顔なのも能登殿に蹴落とされた武者が顔芸なのも気になりますが、一番すごいのは水死した女官の姿。うつぶせになって長い髪が海面に広がっている様子がそれはもうリアルに表現されています。これは子どもが見たら泣くレベルですね。是非、実物を見ていただきたいです。
第一六景『祇園精舎の鐘の声』・・・一人生き残った清盛の娘、建礼門院は仏門に入り五九歳の生涯を閉じられます。こちらはその晩年の様子を表しています。
第一七景『琵琶法師』・・・かつてはこちらの名物ロボットでしたが、今では動くこともなく、ただ琵琶を抱えるのみ。歴史館自体で諸行無常を表現してるのかと突っ込みを入れたくなります。その展示を眺める親子連れがいますが、それは・・・。

ざっとダイジェストで流して行きましたが、面白い場面は写真館のほうに画像をうpしてありますので、ご覧ください。ご覧になって興味を持ったら是非、こちらに行ってみてください。実物の迫力にはおらの画像は遠く及びませんので。聞きしに勝るろう人形の出来栄えが、あなたを驚かし、さらに聞きしに勝る寂れっぷりに涙することでしょう。つうか、画像で見た限りだと東京タワーとかにあるろう人形とかよりも精巧にできてる気がするので、マジお勧め。いつ閉館してもおかしくない寂れっぷりなので、行けるうちに行った方がいいと思って今回は強行軍で予定に組み込みましたが、満足のいく結果となりました。